電子帳簿保存法が改正!変更点や気をつけるべきポイントを解説
電子帳簿保存法が改正され、2022年1月から施行されています。この法改正により、帳簿書類の電子データでの保存方法が大きく変わりました。2023年10月から導入されるインボイス制度とも関わり、個人事業主やこれから独立を検討している方も把握しておくべき内容です。そこで本記事では、電子帳簿保存法改正による変更点や、気をつけるべきポイントなどを解説します。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、紙での保存が義務づけられている帳簿書類について、電子データによる保存を可能とするルールなどを定めた法律です。略して「電帳法」とも呼ばれます。
法律自体は1998年に制定され、これまで何度か改正されてきました。
たとえば2005年には帳簿のスキャナ読み取りによる保存が可能となり、2016年にはスマホなどで撮影した画像も帳簿書類として認められるようになりました。
このように、時代の変化に合わせ電子データでの保存がしやすくなるよう改正されており、今回の改正も政府のデジタル化推進などを踏まえた内容となっています。
電帳法改正について理解するためには、まず法律の対象となる書類の保存区分を知っておく必要があります。電帳法における保存区分は、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存の3種類です。
保存区分 | 内容 |
---|---|
①電子帳簿等保存 | 会計ソフトなどで電子的に作成した国税関係の帳簿・書類を電子データのまま保存 |
②スキャナ保存 | 紙で受領・作成した書類を画像データで保存 |
③電子取引データ保存 | メールやインターネットからのダウンロードなど、電子的にやり取りした取引情報をデータで保存 |
電子帳簿保存法改正による主な変更点
電帳法改正による主な変更点として、以下の4点があります。
1. 税務署長による事前承認制度の廃止
これまでは、電子的に作成した国税関係帳簿を電子データとして保存する場合、導入開始3ヶ月前までに税務署長に申請し、承認を得る必要がありました。
しかし、この方法では事業者の事務負担が大きいことから、改正後はこうした事前承認が不要となりました。
2. タイムスタンプ要件の緩和
タイムスタンプとは、電子データがいつ作成されたのかを記録するものであり、データの改ざんを防ぐ役割があります。
従来は、帳簿などをスキャニングしてから3日以内にタイムスタンプを付与しなければなりませんでしたが、今回の法改正により最長2か月以内に緩和されました。また、書類受領後の受領者による自署も不要となりました。
さらに、訂正や削除を行った履歴が記録されるクラウドサービスなどを利用し、入力期間内に保存したことを確認できる機能があれば、タイムスタンプ付与に代えることができます(訂正・削除ができないクラウドなども含む)。
この改正により、担当者の事務負担が緩和され、時間的にも余裕を持った対応が可能となりました。
3. 検索要件の緩和
帳簿書類を電子データとして保存する場合、内容をすぐに確認できるよう検索機能を備えている必要があります。これに関して、従来は取引年月日、勘定科目、取引金額その他の帳簿の種類に応じた主要な項目を検索項目として設定することが必須でした。
しかし、法改正により取引年月日、取引金額、取引先のみとなったことで、大きく簡略化されました。
電子データの保存方法としては、フォルダ単位で検索できるようにファイル名を「20220401_(株)〇〇_110000」といった形にしておく方法や、Excelなどで索引簿を作成し、ファイルと紐づけておく方法などがあります。
4. 適正事務処理要件の廃止
適正事務処理要件とは、データの改ざんなどを防止するために、定期的かつ厳密な検査や再発防止策の社内規程整備などを行うことです。事務処理について2名以上での相互確認が必要であるなど、事業者にとって負担が大きい点が課題でした。
今回の法改正ではこの要件が廃止され、事務処理が1名でも可能になったほか、定期監査まで破棄できなかった紙ベース原本も、スキャンした後直ちに破棄可能になりました。
電子データで保存する際の注意点
帳簿書類を電子保存する際の注意点として、「真実性の確保」と「可視性の確保」という2つの要件を満たす必要があります。
真実性の確保
保存した電子データに不正や改ざんが施されていないことを担保するために、以下のいずれかの対応を取ることが求められます。
タイムスタンプの付与されたデータを受け取る
取引データを受け取った後、速やかにタイムスタンプを付与する
訂正・削除履歴が確認できるシステムを使用するか、訂正・削除ができないシステムで取引情報の受け取りや保存を行う
不正な訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定める
可視性の確保
保存したデータをすぐに確認・出力できるようにするため、以下の対応を取る必要があります。
保存場所に、パソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、速やかに出力できるようにしておく
「年月日」「金額」「取引先」の3つの検索機能を確保しておく
こうした真実性・可視性の確保のほか、スキャナ保存された国税関係書類に隠ぺいなどの不正があった場合、重加算税が10%加重される措置が整備されたことにも留意しましょう。
おわりに
この記事では、2022年1月から施行されている電子帳簿保存法改正について解説しました。
内容をまとめると以下のようになります。
電帳法の対象となる保存区分は、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存の3種類
事前承認制度の廃止やタイムスタンプ・検索要件の緩和など、事業者負担が小さくなるよう制度が変わった
帳簿書類を電子データで保存する際は、真実性と可視性を確保した対応が求められる
上記要件に対応したクラウドや会計ソフトなどを選定し、電子化に備える
今回の法改正により、電子取引による適格請求書は電子保存が義務化されましたが、これは2023年10月から始まるインボイス制度とも関連します。
インボイス制度の概要や対応すべきポイントについては以下の記事で解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
関連コラム:インボイス制度で何が変わる?対応方法や電子帳簿保存法との関係も解説
なお、紙から電子への変更に伴う事業者の負担に配慮し、電子データの保存義務には2年間の猶予期間が設けられることになりました(2023年12月31日まで)。
インボイス制度は事業規模の小さい免税事業者に大きく影響します。そのため、個人事業主や独立を検討している方は、早めに電帳法改正やインボイス制度に対応した会計ソフトやクラウドサービスなどの導入を進めておきましょう。
【参考】
国税庁HP:「電子帳簿保存法が改正されました(令和3年12月改訂)」
同 HP:「令和3年度改正 電子帳簿保存法 YouTube動画「国税庁動画チャンネル」(令和4年1月更新)掲載資料」
経済産業省(中小企業庁)HP:「どうすればいいの?『電子帳簿保存法』」