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個人開業・法人開業による確定申告について

サラリーマンは、会社の年末調整を通じて所得税を納税できるため、確定申告をしたことがないという方は、決して珍しくありません。しかし、独立した後は、自身で確定申告の要否を判断しなければなりません。そして、確定申告は個人で開業する場合だけでなく、法人で開業する場合にも社長個人として必要になることがあります。現在、個人で開業するか、小規模な法人を開業するか迷っている方は、個人事業主と社長個人の確定申告の違いを把握しておく必要があります。

 

個人事業主の確定申告

確定申告が必要になる所得

確定申告とは、毎年1月1日~12月31日の間に発生したすべての所得を、翌年3月15日までに、税務署に申告する手続きのことです。個人事業主の場合、個人事業から生じた所得はもちろんのこと、それ以外の所得もあれば、それも合わせて申告します。
たとえば、3月末に会社を退職し、4月から開業した年の確定申告では、1月~3月の「給与所得」と、4月~12月の「事業所得」を申告することになります。
広告代理事業を営む個人事業主となりますと、クライアントから受け取る売上高などの「収入金額」から、委託先へ支払った報酬、従業員などの人件費、オフィスの家賃、交際費、交通費、通信費、専門書の購入費、購入した事業用の固定資産(例:コピー機、PCなど)があれば減価償却費・・・といった「必要経費」との差額が「事業所得」になります。
よく知られている「青色申告特別控除」は、適用要件を満たせば、この「事業所得」からさらに控除することができます。

 

確定申告書の提出基準

所得税は、下記のように計算されます。
(所得の合計-所得控除)×所得税率-税額控除

一年間の所得が個人事業による所得のみで下線の部分の額がなければ、基本的に確定申告をする必要はありません。厳密にいうと、下線の部分が、税額控除の一つである「配当控除」以下であれば、確定申告をしなくてよいことになっています。
ただし、個人事業主には、青色申告をすることによって、青色申告特別控除を適用したり、事業の赤字などから発生した欠損金を、翌年以降に繰り越したりできるメリットがあります。このことから、個人事業を開始した後で確定申告をしない年は、通常はないと考えましょう。

 

確定申告で地方税の申告もできる

確定申告をすると、個人事業税・個人住民税の申告をしなくて良いメリットもあります。
これらの地方税は、原則、都道府県税事務所や1月1日時点に住所のあった市町村に個別に申告する必要がある税なのですが、税務署に提出する確定申告書の所定の記載欄にチェックを入れることで、この申告を省略することが認められています。

 

法人代表者の確定申告

社長個人の所得は「給与所得」

申告期限や、所得が10種類に分かれるなどの基本事項は、個人事業主も社長個人も同じですが、法人で開業した場合、発生する所得の種類に違いがあります。
法人で開業した場合、ご自身が社長となって、法人から役員報酬を受け取ることが一般的です。
この役員報酬は、税務上、サラリーマン時代の給与と同じ「給与所得」に分類されます。
したがって、法人で源泉徴収・年末調整を行う必要があり、それによって、基本的には個人の確定申告は不要となります。
ただし、その金額や、役員報酬以外の所得の存在によって、確定申告が必要になる場合があります。

 

確定申告書の提出基準

以下のA~Dのいずれか一つにでもあたる場合は、確定申告が必要になります。
A:給与所得・退職所得以外の所得(①)が20万円を超える※
B:2か所以上から給与を受け取っていて、年末調整を受けていない給与の収入金額と、上記①の合計が20万円を超える
C:役員報酬の総額(収入金額)が2,000万円を超える
D:会社(※)から、貸付金の利子・不動産の賃貸料・機械等の使用料などとして対価を受けている
特に、法人設立初年度は、同じ年に前職の所得があることが考えられるため、AやBの要件に注意が必要です。
(※)税法上の同族会社にあたる会社。会社の経営権の過半数を社長やその親族等が所有する会社のこと。例:ひとり社長の会社、家族経営の会社など

 

社長1人に給与を支払えば源泉徴収や年末調整が必要に

所得税法には、給与所得にあたる支払いをすれば、個人・法人にかかわらず、税法上の源泉徴収義務者になるというルールがあります。
これによって、個人事業主でも、親族や従業員を雇って給与を支払う場合は、月々の源泉徴収税の納付と年末調整といった事務手続きが発生します。
これに対し、法人は、社長一人に役員報酬を支払っているだけでも源泉徴収義務者にあたり、源泉徴収や年末調整の事務が発生します。
なお、前項のCは年末調整の対象にならないため確定申告をするのですが、他の3つは、法人で年末調整もした上で確定申告も行うこととなります。

 

・法人の申告+個人の申告になる

法人で開業すれば、当然、法人税等の確定申告も必要になります。
法人では、法人税・法人事業税・法人住民税などの申告が、税務署や都道府県税事務所、市区町村の3か所に対して必要になります。(東京都特別区は2か所)
個人事業主のように、一か所に申告すれば他を省略できるルールはありません。
つまり、法人で開業すると、法人として複数の税務申告を行いながら、社長個人の年末調整や確定申告についても考えなければならないのです。

 

まとめ

個人で開業した場合と法人で開業した場合の、確定申告を中心とした税務の違いを解説しました。法人には、個人にはない節税メリットも多くありますが、税務が複雑であるということは、それだけ労力がかかりますし、税務申告のための会計ソフトや専門家に支払うコストも考えなければなりません。