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<手続関連-5>個人事業主は事業用の銀行口座とカードを作ろう! メリットや注意点を解説

個人事業主として独立する際に気になるのが「事業用の銀行口座やクレジットカードを持つべきか」という問題です。プライベート用とは別にカードを作り、口座を開設することに煩わしさを感じる方もいるかもしれません。そこで本記事では、事業用のカードや口座を作ることのメリットや注意点などを解説します。

個人事業主は事業用の銀行口座・クレジットカードを作ろう

個人事業主として仕事をしている方の中には、プライベート用の口座で事業用の支出や収入を管理していたり、クレジットカードをプライベートと仕事で使い分けていなかったりする方もいるかもしれません。特に、小規模な個人事業主にこの傾向が見られます。

しかし、結論から言えば、個人事業主は事業用の銀行口座やクレジットカードを持つべきです。なぜなら、事業用口座やクレジットカードを一度作れば、あとあと様々な面で恩恵を受けられるからです。

以下では、事業用の銀行口座やクレジットカードを持つメリットをご紹介します。

個人事業主が事業用銀行口座・クレジットカードを持つ4つのメリット

個人事業主が事業用の銀行口座やクレジットカードをもつメリットとして、主に以下の4つがあります。

1.収入・支出の管理が楽になる

一番大きなメリットは、収入や支出の管理が楽になることです。

プライベートと事業用の入出金を同じ口座で行っていると、どれがプライベートの支出でどれが事業用の支出かわからなくなってしまいます。クレジットカードも同様で、明細の事業用とプライベート用の支出が混在してしまい、仕分けが煩雑になってしまいます。

また、事業とプライベート間のお金のやり取りが頻繁に起こり、「事業主貸」「事業主借」などの複雑な会計処理を行わなければならない点もデメリットです。

こうした事態にならないよう、あらかじめ両者の収支を区別しておくと、お金の管理が圧倒的に楽になります。

2.事業の財務状況が把握しやすく、資金繰りが容易になる

1つ目のメリットと関連しますが、事業用の銀行口座があれば、事業のために使ったお金だけが出入りするため、その月の収支が黒字か赤字かなどがすぐにわかります。事業用の支出を明確にすることで、不要な経費を削減しやすくなるなど財務状況の改善に役立つはずです。

クレジットカードの場合も同様であり、その月に事業用にどれだけ支出したのか、明細を見るだけで一目瞭然になります。
反対にプライベートと混同していると、あとで確認したときに事業用かどうかわからなくなってしまい、事業の収支が見えにくくなってしまいます。

3.確定申告や税務調査に対応しやすくなる

確定申告をする際には、その年の売り上げや支出(経費)をもとに貸借対照表や損益計算書などを作成しなければなりません。事業用の口座があれば、通帳の記載内容をもとに売上や支出の額が簡単に把握でき、確定申告をスムーズに進めることができます。

会計ソフトを導入している場合、ソフトが作成した帳簿と通帳のお金の動きを照合しやすい点もメリットです。多くの会計ソフトはクレジットカード明細を同期してくれますが、事業用カードならプライベート用と仕分けすることなく同期でき、帳簿をスムーズに作成できるからです。

また税務調査が入った場合も、支出の記録として事業用クレジットカードの明細をそのまま提出でき、私的経費は計上していないと主張しやすくなります。もちろん、売上の記録も事業用口座の通帳ですぐに確認できます。

4.経費の支払い方法で迷わない

事業用の支出をする際には、現金、バーコード決済、クレジットカード・プリペイドカード、銀行振込など様々な決済手段がありますが、あらかじめ「経費の支払いは事業用のクレジットカードで」と決めておけば、支払いのときに迷うことがありません。

ポケットマネー(現金)で事業用の支出を行うと、勘定科目に「事業主借」と記載するなど帳簿の作成が複雑になってしまいますが、こうした手間も削減できます。

事業用銀行口座・クレジットカードを持つ際の注意点

以上のように、事業用銀行口座・クレジットカードを持つと様々なメリットがありますが、一方で注意点もあります。

1.事業の形態や特徴にあった銀行口座を作る

口座の開設先の金融機関としては、大きく分けてメガバンク、信用金庫・地方銀行、ネットバンクの3種類があり、それぞれ以下のような特徴(メリット・デメリット)があります。

金融機関 メリット デメリット
メガバンク ・全国規模で多くの支店やATMがある
・ネームバリューがあり、信頼度が高い
・口座開設者が多く、同じ銀行同士なら振込手数料が安い
・クレジットカードの審査基準は比較的高め
・地方に行くほど支店やATMが少なくなる
地方銀行・信用金庫 ・当該地域での支店やATMが多い
・個人事業主向けの口座があるなど、比較的開設しやすい
・当該地域以外では支店やATMが少なく、ネームバリューも高くない
ネットバンク ・どこからでも手続きや振込などができる
・手数料無料など、独自のサービスも豊富
・所得税の還付金の振込先として登録できないところがある

以上を踏まえたうえで、自身の事業の形態・特徴(地域密着なのか、全国に取引先がいるのかなど)に合った金融機関を選ぶことが大切です。

2.手数料や年会費を考慮する

金融機関によって手数料がまちまちな点にも注意が必要です。利用する曜日や時間帯によって手数料が異なるほか、振込手数料が無料の回数やコンビニなどのATMを利用した際の手数料なども異なります。

そのため、自身の仕事や生活スタイルを踏まえ、利用することの多い時間帯の手数料が安い金融機関を選んだ方が良いでしょう。

また、年会費がかかるクレジットカードも多いため、機能や特典なども把握したうえで、自分に合ったものを作成することが大切です。

3.クレジットカードの審査が通りにくい可能性も

個人事業主の場合、信用や収入の不安定性といった面から、クレジットカードの審査が通りにくいと言われます。

審査を通りやすくするためには、安定した収入を確保すること(できれば3年以上)が重要ですが、過去に支払いを遅延していないことや、過度な借入金がないことなども判断材料になります。心当たりのある方はこれらを確認しておいた方が良いでしょう。

加えて、屋号の入った銀行口座を作ることも効果的です。屋号があることで事業の実態を明示でき、信頼度が高まります。ただ、理想を言えば、独立前の組織に属しているときに作っておきたいところです。

クレジットは法人カード(ビジネスカード)にするべき?

クレジットカードには、プライベートでも使える個人用のカード以外に、個人事業主や中小企業向けの法人カード(ビジネスカード)もあります。

通常の個人用カードに比べ利用限度額が高く、ビジネスに便利な付帯サービスが充実している点が特徴です。また、年会費を全額経費計上できるメリットもあります。

ただし、分割払いができないものや、年会費が数千~数万円かかるものもあります。そのため、事業規模がそれほど大きくなければ、年会費が安い、もしくは無料の個人用クレジットカードをプライベートと別に持っていても問題ありません。

まとめ

今回は個人事業主にとっての、事業用口座やクレジットカードについて解説しました。

改めて結論を述べると、個人事業主は事業用の銀行口座・クレジットカードを持つべきです。そうすることで、収支の管理や確定申告書の作成など経理上の手間が省け、財務状況も把握しやすくなります。

また、口座の開設先としては多くの金融機関があるため、手数料やATMの充実度など、それぞれの特徴を把握したうえで最適なものを選びましょう。