知っておきたい労働保険、社会保険とは
例えばデジタルエージェンシーをやっていると案件が増え、自分だけでは裁けなくなる嬉しい悲鳴が出てきます。そのときに、営業や広告運用者など人を雇おうと考えると気になるのが保険関係。労働保険・社会保険という言葉は知っていても自社が加入対象か否か、手続きはどうすれば良いのか中々わかりにくいもの。本記事では労働保険・社会保険について解説したのち、手続き方法について説明いたします。
1.労働保険とは
労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」の2つの保険の総称です。労災保険は労働者災害補償保険の略称で、労働中のケガを補償するものとご存じの方も多いことでしょう。労働者のための保険で、労働中のケガのため医療機関にかかったり、4日以上休業したりすると給付がなされます。
雇用保険は、雇用中の育児や介護による休業の際の手当や、離職後の職探し中、教育訓練等を受けたときなど、働くことに関する様々な場面で活用される保険です。
これら2つの保険の保険料は「労働保険料」として事業主が納めます。労働保険料は被保険者に支払われた賃金を元に計算されます。
労災保険は、アルバイト等関係なく事業主に使用されて労働する方全員が被保険者となります。個々の加入手続きはありません。
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがある場合に被保険者となります。こちらは個々の労働条件を見て加入手続きが必要となります。なお、「事業主」や「代表取締役」は労働者でも雇用されているものでもなく、雇用する側なので労災保険・雇用保険の被保険者となりません。
労災保険 | 雇用保険 | |
事業で使用される方 | 被保険者 | 1週間で20時間以上労働し、31日以上雇用される見込みの方 |
事業主が3/1000負担 | 保険料率※ | 事業主が6/1000負担
被保険者が3/1000負担 |
※2021(令和3)年度一般、その他の事業の場合
2.社会保険とは
社会保険とは、「健康保険(介護保険含む)」と「厚生年金保険」の総称です。先述の労災保険、雇用保険もひっくるめて社会保険と呼ばれる場面もあります。本記事では健康保険と厚生年金保険の総称を指すものとして記述しています。
健康保険は、医療機関による診療を受けた際に自己負担が3割になる、あの保険です。健康保険にも種類があり、「国民健康保険」と「健康保険」とで被保険者と保障の内容が異なります。
国民健康保険は個人事業主やその扶養者、扶養に入らず社会保険にも加入していない方などが加入する保険です。医療費の一部負担や高額療養費、出産育児一時金などの給付があります。
健康保険は職場を通して加入する保険です。国民健康保険と同等の給付にプラスして、疾病のため休業した際の傷病手当金や出産で会社を休んだときの出産手当金などの給付があります。
厚生年金保険は、いわゆる2階建て年金の2階部分で、国民年金の上乗せ部分の年金と考えていただくと良いでしょう。こちらも健康保険と同じく職場を通して加入します。また、厚生年金の被保険者に扶養されている方も厚生年金に加入する形となります。
社会保険料は事業主と従業員の折半となり、原則翌月末日までに事業主が納付します。
3.従業員が○人以上は適用事業所!要件をチェック
社会保険は、まず事業所(会社)が社会保険の適用となるかどうかを判断します。
- 法律で社会保険の加入が義務付けられている事業所
- 法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
- 常時5人以上の従業員が働いている事務所、工場、商店等の個人事業所※
※サービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等除く
適用事業所となったら、次は加入対象を判断します。一般社員や役員は加入対象(被保険者)となりますが、パートアルバイトで1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が一般社員の4分の3未満の方は原則対象となりません。ただし要件を満たした方は加入対象となります(詳細は日本年金機構ページをご確認ください https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2021/0219.html)。
4.加入等手続きはどうすれば?
それぞれ事業所が所在する管轄行政で手続きします。
労災保険 | 雇用保険 | 社会保険 | |
管轄行政 | 労働基準監督署 | ハローワーク | 年金事務所 |
対象者の加入手続き期限 | 雇用した日がある翌月10日まで | 雇用した日から5日以内 | |
事業主・役員の加入 | 事業主は対象外
兼務役員は対象となる可能性あり |
事業主は対象外
兼務役員は対象となる可能性あり |
適用事業所であれば事業主・役員も対象 |
また、初めて人を雇用する場合には「雇用保険適用事業所設置届」、初めて社会保険の適用事業所となったときには「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を管轄行政へ添付書類と共に提出します。
5.人を雇わずに、個人事業主になった方はまず何をすべき?
法人でない、個人事業主になった方は労働保険・社会保険ともに対象外ですので届出は必要ありません(一人親方など労災保険に特別加入できる場合を除く)。
ただ、勤めていた会社を辞め社会保険を脱退された方は国民健康保険と国民年金への切り替えることとなります。お住まいの市区町村役所に行き手続きを行いましょう。
会社を辞めず社会保険に加入したままで個人事業主となった方はこの手続きも必要ありませんが、事業所得が一定額以上発生すると確定申告の必要が出てきますのでこちらも忘れないようにしましょう。