<手続き関連-2>屋号って必要?登録するメリットや注意点を解説
個人事業主やフリーランスとしてビジネスを行う上で、「屋号」をつけるべきか迷っている方も多いのではないでしょうか?会社名と違い、屋号は必ずつけなければならないものではありませんが、屋号があることで得られるメリットもあります。本記事では、屋号を登録するメリットや決め方、つける際の注意点などを解説します。
屋号とは?
個人で事業を始めるときに気になるのが、「屋号をつけるべきか」という問題です。屋号とは、個人事業主が事業を営む際の「名前」であり、法人における「社名」にあたります。
一般的には商店や事務所の名前として登録することがよくありますが、店舗や事務所を持たないフリーランスの方もつけられます。
確定申告書や開業の届出などには屋号の記入欄がありますが、記入は任意であり届出も義務づけられていません。つまり、自由なタイミングで好きな屋号をつけられるということです。
開業後に屋号を設定・変更した場合も届出などは不要ですが、確定申告書の記入欄には新たな屋号を記載しておく必要があります。
屋号を使う場面
屋号は様々な場面で使用しますが、代表的なものは請求書や領収書など、事業で必要になる書類への記載です。この場合、基本的には個人名と屋号を併記します。また、名刺にも屋号を記載しておいた方が良いでしょう。
事業用の銀行口座の名義を屋号にすることもできます。この場合、名義は屋号の後ろに氏名がつく形となります。屋号を口座の名義にする際は、開業届や青色申告承認申請書、確定申告書の控えなど、その屋号を用いて事業を行っていることがわかる書類を用意しておきましょう。
さらに、ポスターやチラシ、ホームページなど、自分の事業をPRする際にも使えるほか、クラウドソーシングサイトに屋号で登録することも可能です。
屋号を持つことで得られる3つのメリット
前述の通り、屋号を設定するかどうかは個々人の裁量に任されていますが、屋号があることで得られるメリットもあります。主なメリットは以下の3つです。
1. 事業内容を知ってもらいやすい
1つ目は、事業内容を顧客や取引先に知ってもらいやすい点です。「〇〇コンサルティング」「〇〇編集事務所」など、事業内容を表している屋号を設定することで、どんな事業を行っているのか認知されやすくなります。
新規開拓の際にも、事業内容をイチから説明する手間が省けるため効率的です。
2. 信用を得やすく、法人成りにも有利
2つ目は、個人名よりも信用を得やすい点です。これは確定申告書など税務署へ提出する書類に屋号を記入しておく必要があるため、きちんと事業を行っている印象を持たれやすいからです。
また法人成りの際にも、それまでの事業で信用を得た屋号をベースに会社名をつけられるため、事業の継続性の面で有利になります。
3. 銀行口座の資金管理がしやすい
3つ目は、銀行口座の資金管理がしやすい点です。口座を屋号名義にすればプライベートの資金・口座と区別しやすくなり、会計ソフトへのデータ入力や帳簿付け、確定申告関連の書類作成などが楽になります。
屋号を決める際のコツ
屋号の決め方には厳密なルールがあるわけではないものの、多少のコツはあります。一番重要なのは、事業の内容や形態が一目でわかるような名称にすることです。
たとえば店舗や事務所などを営んでいる場合、「〇〇屋」「〇〇企画」「〇〇ラボ」など、実際の店舗や事務所名をそのまま屋号にすれば、取引先などとやり取りする際に紛らわしくなくなります。
特定の事務所などを持たないフリーランスの場合、屋号を持たず本名で活動されている方も珍しくありませんが、ペンネームなどがあれば、その名称を屋号にすると良いでしょう。
なお厳密には、アーティストやタレント、作家などとして本名以外で活動している場合、その名称は「雅号」と呼びます(基本的な役割は屋号と変わりません)。
また、結婚して姓が変わった方は、旧姓を屋号とするのも一つの手です。結婚後も仕事上の名前は変わらないため、不便さを感じずに済みます。
屋号をつける際の注意点
屋号は基本的に自由につけられるとはいえ、いくつか注意すべき点もあります。特に気をつけたいのが以下の3点です。
1. 会社だと思われる屋号はNG
「〇〇会社」「〇〇Co.」のように、会社形態と間違われるような屋号を個人が使用してはいけません。これは会社法で禁じられているため、特に注意が必要です。
仮に法に触れなかったとしても、会社と誤解されてしまうと事業を行ったり融資を受けたりする上でもややこしくなるため、誤解を受けにくい名称にしましょう。
2. 覚えにくい・読みにくい屋号は避ける
見慣れない横文字を多用した屋号や、あまりに長すぎる屋号だと、顧客や取引先に覚えてもらいにくく、読み間違いや聞き間違いなども起こりやすくなってしまいます。そうなるとビジネスをする上で得にはなりません。
屋号には漢字やひらがな・カタカナはもちろん、数字やアルファベットも使えますが、なるべく読みやすく覚えやすい名称を意識しましょう。
3. 有名な商品名などとかぶる屋号、競合と誤解される屋号も良くない
屋号自体は登記をするわけではないため、すでに使われている屋号と同じものでも法的に問題になるわけではありません。
しかし、商標登録されているブランドや商品名などと同じ名称の屋号にはならないよう注意が必要です。最悪の場合、法的トラブルに発展し、賠償などを課されるおそれがあります。基本的には、有名な企業名や商品名と同じ屋号は避けた方が無難です。
また商標登録されていなくても、たとえば同一地域で競合と同じ屋号だと、顧客などの誤解を招く可能性があるため気をつけなければなりません。
事前にインターネットで検索したり、法務省のオンライン登記情報検索サービスを利用したりして確認しておきましょう。
まとめ
屋号は個人事業主・フリーランスにとっての「顔」だと言えます。そのため、事業内容が一目でわかるのはもちろん、覚えやすく読みやすいものにすることが大切です。
また、企業と誤解される名称や、商標登録されているブランド・商品名などと同じものは避けなければなりません。
屋号は業種によってはなくても問題はありませんが、屋号があることで資金管理などの実務面や、信用・認知度の面でアドバンテージを得ることも可能です。
本記事の内容やご自身の業態などを踏まえ、屋号の有無や名称をしっかりと検討しましょう。